社会福祉研究交流集会
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第5回社会福祉研究交流集会第4分科会報告

医療・福祉と地域の再生
地域の支えあい助け合い活動としてのホームヘルプ活動
健生会 幸節澄子

医療法人健生会の自己紹介
東京・多摩地域の中核都市とされる立川市にある立川相互病院(345床)をはじめ、3病院・8診療所・2歯科診療所・6訪問看護ステーション、連携する薬局法人として5つの薬局を持つ地域保険企画、主な診療圏の立川、昭島、日野、国立、国分寺、府中、武蔵村山の各市と西多摩地域出会わせて人口が123万人です。
 さらに、連携する法人としてNPO法人「地域福祉サービス協会」が新たに加わりました。
1,医療・介護の現場からみる高齢者の実態
1)自宅へ帰りたくてもかえれない
Sさん70歳女性パーキンソン病
1さん73歳女性廃用性症候群
Kさん72歳男性脳出血
2)終の棲家を断念し施設に・・
1さん93歳女性寝たきり・痴呆
3)息子さんが仕事をやめて介護
Kさん83歳女性
4)症度の重い人は行き場がない・…切ない思いで相談にのる
MSWの悩み
管がついていてはダメ
酸素吸入量が多いはダメ
気管切開している人は困る
5)さまざまなネットワークで在宅療養をささえている
1さん73歳男性寝たきり、パーキンソン、気管切開
**高齢者の一人暮らし、二人暮らしては病気になったり、障害を持つとたちまち在宅生活が困難になる。ひとり倒れれば二人共倒れの事態になる。

2,ヘルパーステーションづくりの動機…共同組織がすすめる助け合い活動
1)在宅へ症度の高い高齢者がふえている。それを支える家族の介護問題が深刻になっている。介護を支えるヘルパーの養成を始めよう
1996年からヘルパー3級養成を始める。
*ヘルパー3級取得者が中心となって無償ボランテアサークル「ひまわり」の活動始まる。
共同組織の「医療くらしの相談員」活動と併せて位置づけた。
参加者のボランテア精神に基づき自己実現と社会参加をめざす活動…病棟への食事介助・病院の総合案内・通訳ボランテア・ひとりぐらしのお年寄りのお話相手や散歩の介助・お年寄り家庭の掃除、家屋の修理。高齢者の生活の質を高める。
国分寺支部の活動…別紙資料
2)各診療圏域で人権をまもる医療福祉のネットワークをつ<ろう!!
「健生会高齢者医療・福祉のマスタープランづ<り」・・共同組織と共同した検討と計画づ<りがすすんだ。
1998年5月社員総会にて決定…様変わりする情勢を受けて地域毎に病院・診療所・訪問看護ステーションと連携しへルパーステーションをつ<ろう。(2000年までの目標)
今後の在宅を支えるポイントとなる在宅介護支援センターの委託を受けよう。
1997年度からヘルパー2級養成を始める。

3.1998年4月から「健生会協力会ヘルパーステーション・コスモス」の発足・・共同組織の助け合いとしての有償ボランテア活動として
一年間で運営のノウハウを蓄積し実績をつくること、各診療圏域に支部をつくることを目標とした。2名の専任者の配置
まったくあらたな分野なので手探り状態からの出発
98年4月・…登録ヘルパー13名、稼働時間3時間
99年5月…登録ヘルパー270名、稼働時間約200時間へ
*各支部の発足
98年7月…武蔵村山支部、98年10月・・国分寺支部
98年11月・・西多摩支部、98年9月…国立支部
99年2月…昭島支部99年3月…日野支部
99年3月…立川支部99年4月…府中支部
*99年度地域福祉推進事業の補助金申請・・武蔵村山と国分寺支部
市や介護支援センターからもヘルパー派遣依頼を受けている。

4.1999年度からNPO法人を取得して
健生会、共同組織、薬局法人と共同して別組織・NPO法人格を取得していく・…99年6月認可される
*無償ボランテア「ひまわりの会」、有償ボランテア「ヘルパーステーション・コスモス」の活動や共同組織の「医療・くらしの相談」活動と連携して、また地域の民主団体と協同していく。
活動としては*公的な委託事業、介護保険の適用事業、その他の地域で高齢者をささえる総合的な事業をめざす。

5,これらの活動をとうしてみえてきたもの、変化したこと
1)地域に潜在するエネルギーの大きさ・・おばさんパワー
「わたしも何か人の役に立つことがしたい。」
「いずれ自分も歳を取ったらこの住み慣れた地域で暮らしたいその定めに今できることは?」
「老後の仕事として」「収入を得たい」
地域に多くのボランテアの組織があり、旺盛な活動をしている。
2)共同組織みづからの要求や課題として取り組まれてきている
共同組織の支部からヘルパー講座への推薦のとりくみ・・この中でヘルパーの担い手をつ<っていこう。
「コスモス」をささえる財政活動の取り組み
共同組織の変化
3)「コスモス」の活動で重介護者を診療所や訪問看護ステーション、市の保健婦・ヘルパーと連携して地域でささえている。
かなりの部分が公的ヘルパーの制限を「コスモス」で穴埋め
お年寄りの生き甲斐や生活の質の向上につながっている。
そして、ヘルパーとして働<ことで喜びや生き甲斐に。
4)地域に重症者がかえっている。深刻な事例が多いことを実感。
安いヘルパー利用料でも大変。

6、これからの課題
1)利用者の人権を守る視点に立つヘルパー集団づ<り
利用者(患者)から学ぶ・利用者、家族との共感をたいせつに、
2)医療との連携、訪問看護ステーションとの協同。地域の絆づ<り、まちず<りへ
3)介護保険適用事業として育てること、ヘルパーさんの報酬の引き上
げ、介護保険事業と「コスモス」と「ひまわり」の三重構造を

「もう一つの過疎化」と高齢者の医療と福祉
一珠洲市日置地区調査から一
河野すみ子(石川・医療福祉同題研究会)

1.はじめに
@珠洲市日置地区を調査対象にした経緯
「石川県保健医療計画」が1988年4月に発表
住民の立場にたった「保健医療計画」の提起が必要。高齢化がすすむ過疎地域において住民の生命、健康、福祉を守り、発展させることが重要な課題。
過疎地域で高齢化がすすんでいる珠洲市、日置地区の実態調査を実施.
Aこれまでの調査

1989年8月 珠洲市日置地区(狼煙中前田、横山、洲崎)住民にたいして、個別面接調査、69世帯
1990年8月 個別面接調査(前回調査対象者の追跡調査)
単身高齢者世帯(13世帯)、要介護者・入院者を抱える世帯(11世帯)
1991年2月 個別面接調査(前回調査対象者の追跡調査)
1992年2月 個別面接調査(前回調査対象者の追跡調査)

Bこれまでの調査の結果より
・日置地区は医療機関から遠くはなれ、交通機関の便も悪いので、車などの移動手段をもたない高齢者の多くは一日かけて医療機関に通っている。
・日常生活の困難なこととして、医療機関が遠くて通いにくいと答えた人が最も多く、住民は「診療所の開設」を強く求めている。
・「これからもずっとここに住みたい」と答えた人が多かった。
・高齢者世帯が多いが、高齢者福祉サービスを利用している人は少ない。
・すでに転出してしまった空き家が多くみられた。
・医療、福祉サービスヘのアプローチが困難なもとで、高齢者が流出するという「もう一つの過疎化」とも呼ぶべき事態が進行していた。

2.珠洲市、日置地区の概要
@人口が減少し、高齢化がすすむ(表1、表6)
A就業者数の減少。第1次産素人口比率の低下(表2)

  農業 漁業 林業 建設業 製造業
1980年 4,953人 781人 101人 1,831人 2,099人
1995年 1,879人 449人 54人 1,557人 2,488人

B出稼ぎ者は減少傾向にあるが、珠洲市で437人、日置地区で42人である(1998年度)
(表3、表4)
C医療機関について

病院 1ヶ所(病床数199床)
診療所 12ヶ所
歯科診療所 8ヶ所

これらは、市の中心部に集中している

D高齢者福祉サービスについて
ホームヘルパー 82人(1998年4月1日)
デイサービスセンター 3ヶ所、サテライト型デイサービス(三崎、日置地区)
特別養護老人ホーム 1ヶ所(定員100人)

3.1999年調査について
(1)1999年調査の概要
対象:1989年調査の69世帯
期間:1999年3月13〜15日
方法:原則として個別面接による蘭き取り調査
調査表は世帯調査と個人調査の2種類を用いた
調査できた世帯 54世帯(うち郵送によるものが4世帯)
調査できなかった世帯 15世帯
一人くらしの方が転居(2世帯)、一人くらしの方が入院中(1世帯)世帯員の死亡、空き家になる(6世帯)、出稼ぎで不在(2世帯)調査に協力してもらえなかった(4世帯)
(2)調査結果(第1次報告)
@世帯状況
1)調査世帯の世帯員数と年齢構成(表5、表6、表7)
調査世帯数 54世帯
調査世帯の世帯員数 161人
1世帯当たりの世帯人員 2.98人
高齢化率 44.7%
65歳以上の親族のいる世帯数の割合 88.9%
20〜39歳の女子人ロ 5人
2)調査世帯の家族類型(表8)
夫婦のみ世帯 16世帯
うち、高齢夫齢世帯(夫65歳以上、妻60歳以上) 13世帯
単独世帯 8世帯
これらの世帯は、65歳以上の者1人のみの高齢単身世帯
高齢単身世帯と高齢夫婦世帯が合わせて21世帯(38.9%)
3)車の運転の可否表8、表9)
運転できる人がいない世帯は18世帯(33.3%)
うちわけは、高齢単身世帯(8世帯)、高齢夫婦世帯(7世帯)、要介護者・入所者がいる世帯(3世帯)
年収200万円未満の世帯の多くは、運転できる人がいない。
A世帯の所得(表9)
年収100万円未満の世帯が9世帯(表10)
B高齢単身世帯について
男2人、女6人、計8人(表11)
この10年間に夫の死亡により、一人くらしになった方が5人
「介護が必要になった場合、どのように対応してほしいか」という設問にたいし、
できたら自宅で家族に介護してほしい 3人
ヘルパーにきてもらう 1人
入所を考えている 1人
わからない 2人
子どものところへ行く 1人
子どもの所へいったが「かごのとり」だったので、「自宅」を希望。
「自宅」を望んでいる人も、まずは子どもと相談すると答えている。
Cこの10年間の人口、世帯の変化
1)65世帯(転居、不在、死亡が確認できた11世帯を加える)の人口の変化(表12)
1989年207人→1999年166人 41人減少
死亡 29人、転出 38人、増加 26人
2)この10年間に、新たに空き家になった世帯(表13)
子供のところへ行った(2世帯)、子供のところへ行き、そこで死亡(2世帯)
世帯員の死亡(4世帯)、合計8世帯
3)1989年の高齢単身世帯について(表14)
ひとりで生活ができなくなり、日置地区から去っていった方が3人

4.まとめ
@この10年間に人口が減少し、高齢化がいちだんとすすんだ。(表15、表16)
A新たに空き家になった世帯が8世帯あった。
B診療所などの医療機関は開設されていない。
Cホームヘルパーが増え、デイサービスセンターが整備されるなど高齢者福祉サービスが拡充されつつあるが、高齢者がひとりで生活できなくなると、この地域から去っていかなければならないという「もう一つの過疎化」がいっそう進行している。
D「もう一つの過疎化」のより具体的な過程が明らかになった。
E医療機関を整備し、福祉サービスを拡充しながら、住民の生命、健康、福祉を守り、発展させることが重要であり、老いても安心して住み茂けられる地域に変えていくことが求められている。

5.おわりに
@これまでの経済政策を見直し、農業などの第1次産業も重視する政策に転換する。
A国民生活にとって必要な水準に、社会保障の拡充ができるような経済運営に切り変えていくことが重要である。
B行政が福祉における公的な責任をはたす立場にたち、行政と住民や地域の組織、団体と共同しながら、福祉型地域づくりをめざしていくことが求められている。

(参考文献)
井上英夫他「過疎地域における医療・福祉」『日本海文化』16号、1990年
河野すみ子他「珠洲市日置地区住民の医療・福祉実態調査報告」『医療・福祉研究』第3号、1990年
井上英夫「過疎化と高齢者の人権保障」『ゆたかなくらし』1991年10月号
佐藤あずさ「過疎地域における高齢者の生活』『医療・福祉研究』第4号、1991年
横山寿一「過疎地域の暮らし・医療・福祉の実態と計画づくりの視点」『住民と自治』1992年3月号
碇山津「『もう一つの過疎化』進行下の財政」『「医療・福祉研究』第5号、1992年

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