社会福祉研究交流集会
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第5回社会福祉研究交流集会第3分科会報告

釜ケ崎における高齢日雇労働者の「野宿化」と就労・生活保障の課題
財団法人西成労働福祉センター 海老一郎

はじめに−日雇労働者の特質と急増する「野宿化」の背景−
釜ケ崎日雇労働者の雇用・失業問題とは
いまなぜ「野宿」なのか

1 釜ケ崎日雇労働市場の変化と高齢日雇労働者の就労・生活の現状
なぜ建設日雇労働市場の機能が低下してきたのか
・高齢日雇労働者はまず仕事がほしい…と訴えている
月1回の就労では野宿をせざるをえない生活の実態→最低生活保障(ナショナル
ミニマム)が存在するのか

2.高齢日雇労働者の就労・生活保障の現状と問題点
高齢者特別清掃をとりまく就労保障(日雇労働者の雇用・失業闘争のなかで)
釜ケ崎における医療・生活保護(いのちが間われているということ)→行旅死亡・
結核・集団赤痢が多発するメカニズム

3.動き出した政府・自治体の「ホームレス」対策の内容と問題点
−ホームレス問題連絡会議の「当面の対策」で自立は可能なのか−
・政府・自治体が政策提案するまでの動き
自立支援センターでの就労・生活保障の限界性
・政府の雇用・失業対策の考え方で問題は解決するのか

おわりに一高齢日雇労働者の「野宿化」をくいとめるための緊急提言一
公的就労対策の実現と政府の緊急雇用対策を活用していく運動を
緊急シェルターの設置(居住の権利との関わりで)
生活保護制度の運用改善
【参考文献】
●拙稿『高齢日雇労働者の実態と公的就労事業−大阪・釜ケ崎にみる−』(「労働運動」
1996年3月号 新日本出版社)
●拙稿『失業者のあふれる街で−大阪・釜ケ崎−』(「労働運動」1998年3月号
新日本出版社)
●拙稿『大阪(釜ケ崎)における高齢日雇労働者の実態と対策』(宮下忠子・須藤八千
代・海老一郎他共著「現状報告路上に生きる命の群−ホームレス問題の対策と提案
−」1999年8月随想舎)

不況下における中小業者の営業と生活の実態について
石川県蘭工団体連合会 金森富美子

不況の深化と中小業者の営業の変化
1989年消費税の導入と時期を等しくして始まった長期不況・特に1997年消費税の5%引上げを契機として、深刻な消費不況に陥り、中小業者の営業が大きく脅かされている。

石川の伝統産業

輪島塗事業数

    事業数 事業従事者数 生産額
輪島塗 平成4年 889件 2900人 153億円
平成9年 735件 2303人 95億円
山中塗 平成4年 720件 5000人 350億円
平成9年 630件 3800人 300億円
九谷焼 平成4年 600件 2300人 155億円
平成9年 410件 1980人 145億円
加賀友禅 平成4年 338件 1743人 194億円
平成9年 352件 1559人 180億円
金箔 平成4年 261件 1115人 101億円
平成9年 225件 970人 65億円

 伝統産業の売り上げの落ち込みは近年著しい。上記のように事業所数・従事者数・生産額ともに落ち込んでいる。平成10年・11年について統計はまだだされていないが大きく落ち込んでいることに間違いない。
 金沢の伝統工芸である金箔は従事者の高齢化も手伝って、かっての半数以下になったと言われている。
 加賀友禅は、他の産地と違い手書き友禅を主流とし高い技術と優れた芸術的評価を受け、景気の衰退後も比較的堅調に推移してきたが、ここにきて売り上げの低迷に苦しんでいる。友禅作家と言われる人たちが名いるが、本業で生活できる人は一握りで、多くの人たちが新聞配達や、魚市場などのアルバイトで生活を支えている。
 かっては朝早い仕事は敬遠されたが、今は、先を争って仕事を奪い合う状況になっている。
 輪島塗りも加賀友禅同様、伝統の技術を今日まで伝え、高品質の漆器を供給してきたが、生産高・売上げとも大きく落ち込んでいる。

建設業界
 大手ゼネコンによる下請けたたきが露骨になっている。半値八掛けが平然とまかり通る。仕事を受ければ受けるほど赤字が膨らむ状況になっている。
 住宅を請け負う大工さんに仕事が来なくなっている。消費税の増税と悪政のもとで国民の中に将来不安が広がり、家を建てるどころではない気分が広がっている。
 受注があっても大手の住宅会社にみんな持っていかれる。

製造業
 設備の過剰と産業空洞化の中で仕事が消えたようにない。中国やベトナム並みの単価を押し付けられ、物を作れば作るほど赤字になる。それでもバブル最盛期のころに親会社から、機械を入れなければ仕事を出せないと買わされた設備の借金のため、赤字覚悟で受けざるを得ない、もう限界と言う悲鳴が上がっている。

小売店
大型店の出店ラッシュで、商店街は壊滅状況。特に郊外の商店街は歯抜け状態で体をなしていない。特に松任・野々市地域[金沢の郊外)は大型店の占める売り場面積がそれぞれ84.4%・75.6%にも達している。市民の身近な商店街に生鮮3品(八百屋・肉屋・魚屋)を商う店はほとんどない。展望を持てない営業に跡継ぎもいない状況になっている。

 バブル期に親会社・銀行の言いなりに大きな借入を行った業者は(そのころは銀行がプランナーになって、アパートやマンションを建てさせる、また生命保険金社と結託し、借入をさせて高額な生命保険を契約させた)不況の中で返済に行き詰まるようになった。銀行はその回収に回り、あらたな貸し出しをストップした。
 中には、高利の金を借りさせ、銀行の返済に当てさせるなど強引な取りたてを行った。県や国の制度融資さえ、貸し渋る銀行の姿勢に中小業者の被害が広がっている。
 最近社会問題化している、日栄や商工ファンドなど中小業者向け高利貸しの悪どい手口は新聞等でもご存知のとうり(北陸中日新聞参照)ですが、手形を使い、業者の心理を巧みに利用したこの商法はたちまちのうちに業者を奈落の底に引き込む。
 利息は業者から、元金は保証人から取ることがはじめからしくまれており、この罠にはまったものは、死ぬまで借金地獄に苦しむことに。
 保証人になった人達もこのような恐ろしいしくみになっているとは知らず、気がついた時には親戚・友人を巻き込んで悲劇が拡大することになる。
 元々は銀行の貸し渋りが招いた悲劇ですが、銀行は大手の高利業者に低利で貸しつけを行って、悪徳商法に手を貸しているのだから、銀行の社会的責任も大きいものがある。

このような、状況の中で、中小業者は様変わりをし、町の中心的存在であった、老舗がどんどんつぷされ、町から商店街が姿を消している。かっては労働者に比べ、所得水準が高かった業者も現在では、4人以下の事業所に努める労働者の所得くらいに落ちてきている。その上その中から借入の返済を行うのであるから、生活は大変苦しいものになる。
 今年全国商工団体連合会が行った、「中小業者の営業とくらし、健康実態調査では3年前に比べて売上げが減少したと答えた業者は78%に上っている。
 また、1日8時間を越えて働くと言う人が74.2%、12時間を超えると言う人が12.1%もいる。また休日も1ヶ月全く休まないと答えたが7%、1日から3日と言う人を合わせると26,7%にもなる。低所得に加えて長時間労働を強いられて
いることがわかる。
 また、健康に不安を感じている人は61.9%、医者から休めと指示されても休めなかったことがあると答えた人は47%に達している。
 低所得・長時間労働の中で、健康に不安を感じても医者にかかる時間がない、医療費を払えないの理由で放置することが少なくない実態が浮かび上がってくる。
 国民保険料・国民年金を払えない中小業者も急増している。国保の払えない人が26.6%、'そのうち10.5%の人が資格証明書、短期保険証、届いていないなどの制裁を受けている。こんな中で来年介護保険が導入され、滞納者に制裁規定が適用されたら、ますます悲劇が拡大することは明白。
 戦後日本の復興を支えてきた、中小業者の役割は大きなものがあったし、これからも地域経済の発展には欠かせない存在である。また、安全で住みよい町づくりの視点からも中小商工業者の存在は重要である。
 国や、自治体が中小業者を守る政策を1日も早く打ち出すべきだと思っている。


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