福祉のひろば 2023年9月号商品コード:hiroba-202309
特集 協同組合と福祉をめぐる期待と課題
社会福祉法人とおなじ非営利組織としては、NPO法人や生活協同組合、労働者協同組合による福祉事業が広がりを見せています。とくに、生活協同組合や労働者協同組合などの「協同組合」というあり方は、以前から福祉と親和性が高いことが指摘され、その発展の可能性が議論されてきました。というのも、福祉というのはそもそも、「傷つきやすい状態」に対する社会的・共同的な対応だからです。購買生協を主として発展してきた生活協同組合も、組合員や地域の困りごと・ニーズに応えるかたちで、福祉事業を展開してきました。労働者協同組合(ワーカーズコープ)においても、地域の困りごとに応える仕事おこしが広がるなかで、二〇二二年一二月には、労働者協同組合法が施行されるに至っています。そこで、今号の特集では、そうした協同組合による福祉事業に焦点をあて、協同組合と福祉をめぐる期待と課題について考えました。
行き過ぎた資本主義に抗うあり方として世界的にも注目を集め、発展している「協同組合」というあり方には、福祉事業をおこなううえでも、さまざまな強みがあります。社会福祉の発展を考えるときに、その強みは大きく活かされるべきです。いっぽうで、国が「多様な主体の社会福祉への参入」を謳うとき、その本音は、公的責任を後退させ、国民や地域による自助・互助・共助で社会福祉を補おうとするところにあります。
多様な主体が社会福祉のシステムに関わっているという状況は、競争による淘汰、互助・共助の強化という側面ももちろんもっていますが、同時に、そこに抗う、「人権としての福祉」を求める運動や“きょうどう”が広がっていく可能性も秘めているはずです。人権保障を担う団体として、非営利協同の組織として、それぞれの強みを活かしながら手をつなぎ、「権利としての社会福祉」を守り、発展させていくこと。その“きょうどう”の可能性を、探ってみたいと思います。
【ひろばトーク】
大切なものを失わないように 畑中 久明
●特集● 協同組合と福祉をめぐる期待と課題
生協活動から社会福祉法人の設立へ
──協同福祉会の福祉事業から考える参加と連帯のかたち 大國 康夫
地域の困りごとに応えて仕事をおこす、「協同労働」の可能性
岡元ルミ子
ねがいを真ん中に 広がる“きょうどう”のしくみづくりとネットワーク
清原 浩・内田 芳夫
生活協同組合が福祉事業をおこなう意義と強み 浜岡 政好
福祉と協同組合運動──労働者協同組合法の施行を受けて 鈴木 勉
●トピックス●
〈座談会〉 連載「夕映えのとき」を終えて あらためて高齢者福祉現場の魅力を考える
瀬戸美穂/松下かほる/香川千佳/辻 愛美
●連載●
WORK WORK──わくワク──
子どもから大人まで楽しめる手作り製品 あしたば作業所
婦人保護運動のこれまでとこれから(6) 真野 勝三
「大阪の婦人保護事業を守る会」16年の運動をふり返って
ケア労働処遇改善キャンペーン!⑭ 濵畑 芳和
まともに生活できる賃金の確保こそ人材不足解決の処方箋
JОB&ACTION 全国福祉保育労働組合(30)
平和を守り、人権を保障するために、憲法とどう向き合うか
私の履歴書 社会福祉経営全国会議(30)
公務員から民間へ――天下りではありません 鳴海 義一
阿修羅がゆく わたしが好きな釜ヶ崎(50) 水野阿修羅
相談室の窓から
家族の理解と応援が背中を押して③ 青木 道忠
育つ風景 21年前の卒園生 清水 玲子 68
映画案内 『こんにちは、母さん』 吉村 英夫 70
現代の貧困を訪ねて
近年の相談から――さまざまなケースⅠ 生田 武志 72
似らすとれーしょん道場 似顔絵まんがアート
マスクは天敵じゃ! ラッキー植松
ホームレスから日本を見れば ありむら潜
花咲け! 男やもめ 川口モトコ
みんなのポスト/福祉の動き/今月の本棚
●グラビア● 最期のそのときまで「その人らしく」を支える