福祉のひろば2021年3月号商品コード:hiroba-202103
いのちと暮らしを支える福祉労働
新型コロナウイルス感染症が指定感染症となり、一年がたちました。対人援助の福祉の仕事は大きな影響を受けました。経済成長ばかり重視してきた国の政策、社会のあり方が問われました。政府はこの二五年、「トリクルダウン」を主張してきました。
しかし現実は、儲けた企業や個人は富を溜め込み、労働者には落ちてきていません。
昨年の自殺者数は前年度比で七五〇人増えました。女性や若年層の増加が目立ちます。コロナ禍で多くの人が職を失い、年末には全国で支援団体による相談会や炊き出しがおこなわれました。子ども食堂は前年度から一三〇〇か所以上増えています。
菅総理は、「自助・共助・公助」が理念だと語り、「まずは自分でやってみる」という「自己責任」をおしつけ、医療・福祉現場や困窮している国民への支援には積極的にとりくもうとしません。
一月に開催された第二五回合宿研究会では、福祉現場から、コロナ禍の経験と課題について報告していただきました。
寄稿いただいた大阪府職員関係労働組合の保健師さんのキャンペーンは、六万人の署名をあつめ、メディアに取り上げられています。
国が進めてきた効率性、生産性、経済成長だけでは社会はまわらない、国民の生活は守られないことが、この一年であきらかになりました。これからは、経済の成長ではなく国民のくらしを支えてきた私たちの仕事、実践の中身、その専門性の高さをより大きく、広く発信していくと同時に、私たちがめざす暮らしや社会の“ゆたかさ”とはなにか、ことばにしていくことが求められているのではないでしょうか。『福祉のひろば』でも、そうしたゆたかな福祉実践や人間的な成長と発達、その先にあるだれもが大切にされる社会のあるべき姿を、発信していきたいと思います。
〈目次〉
【ひろばトーク】
新自由主義のつぎの社会へ
~大阪市「住民投票」をへて~ 酒巻 眞世 6
●特集● いのちと暮らしを支える福祉労働
第25回合宿研究会in京都
コロナ集団感染の経験から思うこと 園部 泰由 13
保育は子どもと保護者の“生存権保障” 小堀智恵子 15
地域支援からみえるコロナ禍の状況 安田 光良 18
社会福祉協議会からみるコロナ禍と課題 黒川 奈緒 21
【寄稿】「公務員だから仕方ない」から「公務員だから声をあげよう」へ
コロナ禍での保健師、保健所職員増やしてキャンペーン
小松 康則 23
●トピックス●
【PHOTO】特別養護老人ホームとかみ共生苑ふれあいセンター 30
福祉実践としての「食」を守る
伴光江/若宮匡/奥島須賀子/鈴木徹生/森谷真由/竹原洋子 32
聞こえないマンガ家として、
発信し、行動し、やさしい社会をめざしたい 平本龍之介 40
(高齢)2021年度報酬改定の概要と影響 井上ひろみ 44
(障害)2021年度報酬改定の概要と影響 近藤 正樹 47
●連載●
WORK WORK──わくワク──
香り・旨味・辛味がたぁんと味わえる金澤たんとカレー
特定非営利活動法人ふれあい工房たんと ふれあい工房たんと御所 52
検証! 介護保険20年
第6回 ショートステイからみる介護保険 宮崎牧子・大島浩子 54
かさねあい、はぐくみあう保育実践
前へ向かって! もっと自分らしく輝こう 副島 帆果 58
阿修羅がゆく わたしが好きな釜ヶ崎(20) 水野阿修羅 62
相談室の窓から
班をこえた交流・体験で見えてきたこと 青木 道忠 64
育つ風景 清水 玲子 66
担任の保育士に常勤者がいなくてほんとうにいいの?
ひととしてあたりまえに生きたい
「なかまの里をつくる会」会長として(2) 清田 廣 68
映画案内 『時雨の記』 吉村 英夫 70
現代の貧困を訪ねて 生田 武志 72
緊急事態宣言下の生活困窮問題
似らすとれーしょん道場 似顔絵まんがアート
似顔絵でキャラクターになるのじゃ! ラッキー植松 74
ホームレスから日本をみれば ありむら潜 76
花咲け! 男やもめ 川口モトコ 77
みんなのポスト 50/福祉の動き 78/今月の本棚 81
●グラビア● 1人の餓死者・凍死者も出すな!
第51回釜ヶ崎越冬闘争