福祉のひろば 2019年2月号商品コード:hiroba-201902
◯権利としての社会福祉を貫く憲法の改定は絶対許さない!
昭和30年代初頭から60年代にかけての外交文書22冊(9200頁に及ぶ)文書が公開された。
安倍首相の祖父、岸信介首相の時代も含まれ、安保条約や機密保護法、憲法改定に向けた日本政府の対応の史実が公になった。安倍首相の「おじいちゃんができなかったことをなんとしてもやる」という話は、安倍一族の念願だったということが裏付けられた。この岸信介首相時代も含め、小川政亮さんは、「権利としての社会保障」という思想を形成していった。
今回は、特集で石川康宏さんに登場していただき、今の改憲の動きや社会福祉と憲法など、国民生活や国家としての憲法そのものの土台を、今の時期に合わせて語っていただいた。1957年2月に政権を発足させた岸信介は、この年の6月の訪米を前に、国政選挙で憲法改正に必要な衆参両院の三分の二の勢力を確保できるとの見通しを持っていたこと、訪米中に機密保護法を制定する考えを示していたことも。米側から、日本は機密保護法がないから具体の話はできないと指摘されていたことも明らかになっている。
◯権利としての社会保障を巡って
1964年に出版された『権利としての社会保障』の「はしがき」に、小川政亮さんは、
「私たちは誰しも『人間たるに値する生活を営む権利』をもっている。この権利の観点から社会保障の問題に取組む必要は特に懇意地大きなものがあると考えられる」と書き出し、
「とりわけ、不当な東京高等裁判所の判決に抗議して最高裁判所に上告直後のさる1964年2月14日亡くなられた朝日茂さんのたたかいにどれほど渡した絶えず励まされ、導かれてきたことであろう。朝日さんは、本書が刊行されたら真っ先に献呈したいと考えていた一人であった。不幸、この国の社会保障の貧しさは、権利のためのたたかいの気力だけで支えてきた朝日さんの命をもついに縮めてしまったのである。しかし朝日さんのたたかいは朝日さんを支えてきた多くの人びとによって引き継がれ、その輪はさらにひろがりつつある。その広がりに本書が僅かなりとも寄与することができれば幸である」と結ばれた。
この本の後、「権利としての社会福祉」「権利としての教育」「権利としての農業」などその言葉は、真剣に社会保障の権利の確立を望む人々によって用いられている。
◯歴史的な浅田訴訟とこれからも続く人権裁判
12月17日岡山高裁の浅田訴訟判決の全面勝訴は、岡山市が控訴を断念し画期的なたたかいとして史実に残すだろう。
「七条の解釈は介護保険優先とは書いてない、介護保険と自立支援給付の給付調整規定であることを示した。そもそも介護保険と自立支援給付は別物で障害者の自立や社会参加のための自立支援給付は介護保険では賄えないもの」と示した。
当誌では、浅田さんや愛知県一宮の舟橋さんの生活と訴訟を取り上げてきた。看護保険と障害福祉に大きな問題提起を投げかける判決となった。人権訴訟は続く。また優生保護問題や戦時体制下での徴用工問題についても動いている。これからも、マスコミや政府の情報ではなく、しっかりと事実を見据えて、考えなければならない。主権者国民として、権利としての社会保障を築くためにも。
同時に、発刊40年の節目に、福祉のひろばが、この立場と情報提供のありかたも奮闘しなければならない。 (編集主幹)
ひろばトーク
「違い」の奥にある「同じ」に気づき、考えてほしい
●特集● どうして憲法を変えたがるの?
ずばり石川康宏さんに聞く
〈聞き手〉仲井さやか/植田誠彦
●トピックス●
「国民の権利としての社会福祉」をどう実現するか
経営者全国組織立ち上げについて
営利企業による社会福祉事業の実態と問題(その1) 黒田孝彦
自然災害と障害者 雨田信幸
南西諸島最後の取材地 ハンセン病療養所沖縄愛楽園 黒田孝彦
共有しあい、成長しあう 「大地」の実践から 中村智恵
師と仰ぐ早川一光さんからの学び(1) 編集主幹
●連載●
社会福祉研究に人生あり!
障害者とその家族がよりよく生きられる社会に 相澤與一
相談室の窓から
ひとりで悩まないで(その1) 青木道忠
育つ風景
おしっこをめぐる親子の切ない日々 清水玲子
ひととしてあたりまえに生きたい
社会の矛盾に対する疑問が大きくなる 清田廣
映画案内
ラ・ラ・ランド 吉村英夫
現代の貧困を訪ねて
夜まわりで寝袋を配る 生田武志
似らすとれーしょん道場 似顔絵まんがアート
アイデアで負けない似顔絵じゃー! ラッキー植松
ホームレスから日本をみれば ありむら潜
花咲け! 男やもめ 川口モトコ
みんなのポスト/福祉の動き/今月の本棚 /
●グラビア● 保育の無償化、しかし、なぜ、給食費は有償化なの?