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福祉のひろば 2012年12月号商品コード:hiroba-201212

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福祉のひろば 2012年12月号

【特集】シングルマザーの貧困と福祉

1937(昭和12)年、母子保護法が制定された。その4年前に児童虐待防止法が生まれている。『大阪府社会事業史』(1958年、大阪社会福祉協議会発行)の「第8章 近代の社会事業 第4期」第5節に「児童保護事業」が掲載されている。その第3項に「母子保護事業」がある。

「昭和6(1931)年の満州事変の勃発は我国の政治経済の進路を戦争へと転換せしめ、そのため跛行的な軍需産業景気が到来し、巷に氾濫するカフェー、バー等には夜ごと『歌わせてちょうだい』と金銭をねだる少女の姿が増加し、一方農村の不況による生活上の困窮は、子どもを中心に多くの悲惨事を生み、児童の虐待、欠食児童、身売り等の問題が山積し世人の注目を引くようになった。児童虐待防止法はこうした現実をできるだけ防止するために生まれたのである。」

「昭和6年の全国児童保護大会及び昭和九(1934)年の第5回方面委員大会において当時新聞紙上をにぎわしていた続出する母子心中が大きく取り上げられ論議されたことが誘因をなしている。同じ年、軍事救護法が軍事扶助法と改正され、戦争によって一家の主柱を失った母子家庭の援護が強力に行われるようになった。戦争目的遂行という政治的配慮から特に手厚い援護の手が差し伸べられ、母子寮の存在を大きく浮かび上がらせた。昭和8(1933)年には感化法に代わって少年教護法が制定され、14歳未満の不良少年の教護にあたることになった。」

現在の橋下市政からは考えられないが、大阪市はこの当時、全国に先駆けて乳幼児保護を行っていた。たとえば、1924(大正13)年度より訪問看護婦を設置し、「中産以下の出産のあった家庭を訪問せしめ、一定の訪問票により家庭の状況、既往及び現在歴、栄養法等を尋ね、誤った点には注意を与え、各種の相談に応じ丁寧に指導せしめた。その結果、日を経るに従い乳幼児保護に関する関心が高まり、これを機として直接乳児院に出かけ、保育に関して直接医員に関する指導を受けんとする者が増加した。訪問看護婦はすべて産婆と看護婦の資格を有し、採用後1ヶ月間毎日数時間育児に関する教育を受けた者のみで、昭和10(1935)年現在各乳児院に4名配置されていた」。その当時、全国で乳児院は18か所だったが、大阪府内には4か所あった(ちなみに東京は8か所)。

母子保護法に話は戻る。「昭和初頭の大恐慌、さらには満州事変などによって広範になった国民生活の不安は、なお一段と母子家庭=有子未亡人の生活を困難なものにした。そのため、昭和初頭より母子心中は日を追うて増加し、昭和10年末、中央社会事業協会が調査した資料に見ると、昭和2(1927)年7月より10年6月までの親子心中の件数は1735件(平均1年217件)を数え、親の数2008人、子の数2700人となり、その件数を原因別に見ると生活困難460件、家庭不和322件、精神異常298件、不明202件、自己または配偶者の病弱188件等が主なる原因となっている。貧困に原因する母と子の心中が最も多くを占め、年を追うてその件数は多くなるに至った。このような悲劇が連日新聞紙上を賑わすに至って母子家庭に対する対策が世の注目を浴びるようになり、制定されたのが母子保護法である」──。80年前の日本が再び今、問われているように思える。

さて、今号は「シングルマザーの貧困と福祉」というテーマで企画した。テレビ等でシングルマザーたちが社会で強く生きる姿が映し出されるが、母子世帯が置かれている現実は、到底誌面では書きつくせない。その現実と制度・政策利用も含めて向き合うと同時に、本誌では、現実に生きる母子家庭への応援歌に心がけたかった。

(編集主幹 黒田孝彦)

表紙の絵と写真

絵=神門やす子

写真=マンハッタンのクリスマスツリー(下野祇園)

カット

川本 浩

【ひろばトーク】

母子家庭への支援と「子ども18歳の壁」 原 淳子

特集

シングルマザーの貧困と福祉 ─幸せに生きるための応援歌はあるのか─

[手記] チャレンジするチャンスを! 働き続けられるように社会的支援を

[社会福祉施設での母子支援]

「ひとり親家庭」支援における保育園の役割

シングルマザーと貧困〈乳児院の場合〉

母子生活支援施設における母子世帯への支援 大塩 孝江

母子世帯への制度の現状と課題を考える 山本八重子

「平成23年度 全国母子世帯等調査結果」から

トピックス

10代のママたちを支える「ティーンズママの会」

「身上監護」が困難な成年後見制度の課題(後篇) 有田 和生

連載

フォーラム 政府の意図どおりにさせなかった
「子ども・子育て関連法」と課題 上野さと子

ひとつのこと─社会福祉労働と私たちの実践 人権を尊重し、
子どもの心と身体を育む保育実践 すみれ保育園

連載 小川政亮 第二部 自伝(9) 権利としての社会保障をめぐって 小川 政亮

相談室の窓から 頑張りすぎないで(3) 青木 道忠

わらじ医者 早川一光の「よろず診療所日誌」
不思議、ふしぎ、人間のつくり(その12) 早川 一光

よりあって おりあって─宅老所よりあい物語─ 偽善が剥れる夜 下村恵美子

育つ風景 子どもの愛される権利 清水 玲子

穂波のアメリカ子育て事情 アメリカの医療保険は複雑 吉田 穂波

映画案内 『一枚のハガキ』 吉村 英夫

現代の貧困を訪ねて 大阪での野宿者襲撃・殺人事件 生田 武志

施設訪問ボランティア 夢を失わない! 佐藤智也子

私の研究ノート ひきこもる若者と創る協同実践の可能性 岡部 茜

ホームレスから日本を見れば ありむら潜

花咲け!男やもめ 川口モトコ

みんなのポスト/今月の本棚/しりとりであそぼう!&憲法クイズ/福祉の動き

グラビア

陸前高田・釜石・気仙沼・石巻を訪ねて

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