福祉のひろば 2025年1月号商品コード:hiroba-202501
特集 生活保護現場での人権侵害はなぜ起きるのか
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。この憲法25条を具体化するために存在しているのが、生活保護制度です。
つまり、生活保護制度の中身が、「健康で文化的な最低限度の生活」とはどんな生活かということを、規定しているのです。
しかし、生活保護制度はつねに攻撃の対象にされています。なぜ生活保護制度への攻撃や生活保護現場での人権侵害はあとを絶たないのでしょうか。
生活保護基準以下の生活を強いられている人に対して、まずは「健康で文化的な最低限度の生活」を公的に保障すること、そして、生活保護制度にたどり着いたことをきっかけに、その人がよりよい人生をあゆめるよう社会としてサポートしていくことが、生活保護制度の本来の役割です。それが、社会の問題である貧困問題に、社会として対応していくということです。
しかし、為政者や権力者は、生活が苦しいのはあなたの努力が足りないからだ、自己責任だと強調しつづけ、生活保護利用者が日本の経済や財政の足を引っ張っているかのごとく、攻撃をしつづけています。そうして生活保護制度への偏見をあおりながら、いっぽうで暮らしがきびしい市民を放置し、意図的に市民のなかにある自己責任論を強化させ、さらに生活保護制度への偏見を増大させようとしています。
自治体行政に対しても同じです。生活保護を削減したことを評価するしくみをつくり、職員から一人ひとりの市民が抱える困難に向き合う余裕を奪うことで、生活保護行政のあり方をねじ曲げてきました。
こうしてつくられた世論やしくみのなかで、生活保護を削減することが自治体にとって、ひいては市民にとって良いことであり、正義なのだと信じて仕事をした結果、深刻な権利侵害や犯罪行為が引き起こされてしまっているのではないでしょうか。
生活保護行政にかかわる現場の人の権利侵害によって問題は発覚しますが、その背景には、環境やしくみ、制度、政治、世論が大きな影響を与えています。いちばん身近な自治体職員を敵にするのではなく、自治体職員と一緒に本来あるべき生活保護行政のあり方を求めていくためになにができるのか、なにが大切か、考えたいと思います。
【ひろばトーク】
被爆者の願いを、私の願いに 大田 健志
●特集● 生活保護現場での人権侵害はなぜ起きるのか
桐生市・生活保護行政問題
事件に向き合い、変わるチャンスに 町田 茂
市民の力でくらしを守るために 山形 孝
人権侵害を防ぐのは市民運動のちから 大口耕吉郎
いま、生活保護行政に求められていること 朴 仁淑
──第56回公的扶助研究会全国セミナーに参加して
桐生市の事件から考える、生活保護行政の現在 桜井 啓太
当事者の声を反映した制度の運用を求めて 中野加奈子
●トピックス●
住み続ける権利と生きる権利
――大阪市による避難者追い出しを許さないⅡ 黄 驥
コロナ「留め置き死」問題は何を問いかけているか
中村 暁
『福祉のひろば』アンケートにご協力ください
年賀広告
●連載●
なかまと職員と家族と、ともに築く暮らしの場
親と子が自分の人生を生きていくために 貝淵 礼子
続・ヘルパー歳時記
正解を求めず、そのときの心地よさを大切にしたい②
WORK WORK──わくワク──
身近に使える便利なハンドメイドバッグ 仲間の家
JОB&ACTION 全国福祉保育労働組合(46)
「社会福祉の市場化」政策の転換を
私の履歴書 社会福祉経営全国会議(46)
あるべき保育の追求そのものが法の実践 國本 依伸
阿修羅がゆく わたしが好きな釜ヶ崎(66) 水野阿修羅
育つ風景
第43回福島の保育・子育てのつどいに参加して 清水 玲子
映画案内 『山田洋次が見てきた日本』(その1) 吉村 英夫
現代の貧困を訪ねて 生田 武志
沖縄の貧困地域と戦争跡を訪ねる(その3)
似らすとれーしょん道場 似顔絵まんがアート
空をこえてラララ星のかなたに詩をとどけ──じゃ ラッキー植松
ホームレスから日本を見れば ありむら潜
花咲け! 男やもめ 川口モトコ
みんなのポスト/福祉の動き/今月の本棚
●グラビア● 綱領たんけんプロジェクト! 多摩福祉会をたずねて